盧恒のノート

インターネットの未来を決めるのは誰か?

インターネットの記録を管理する組織に、それを統治する権力を与えたのは誰なのか。このノートでは、身近なたとえからネットワークの新たな設計まで、その問いをたどる。

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  1. ノート 14価値を支配するのは誰か?

    論考14:投資資産としてのIPv4はどこまで価値を伸ばしうるか

    300ドルのサーバーを稼働させるためのアドレスに、なぜセント単位の値段しかつかないのか?

    IPv4アドレスは、世界のデジタル経済において、いまなお最も過小評価されている資産の一つだ。その評価額が抑え込まれているのは偶然ではない。構造的な問題である。そして、その抑制は世界中のISPやインフラ事業者の企業価値が低く抑えられることに直結している。

  2. ノート 13インターネットはどうあるべきか?

    論考13:分散型台帳技術による世界のIPアドレス登録の分散化について

    一意性を保証するのが組織からアルゴリズムに変わると、何が変わるのか?

    今日、インターネットの最も根本的な層であるIPアドレス登録は、依然として五つの民間の地域インターネットレジストリに集中している。それぞれが世界全体の登録データベースの一部を保有し、一国の法域の下で活動している。技術的にはごく単純な、数百メガバイト規模の登録データベースにすぎない仕組みの維持に、五つの組織を合わせて年間数億ドルが費やされている。この構造は、いまや世界の重要インフラとなったものに、官僚主義、非効率、地政学的リスク、そして単一障害点を持ち込んでいる。

  3. ノート 12思想をどう現実にするのか?

    RIPE NCCの運営費――なぜ会費を大幅に引き下げるべきなのか

    レジストリの予算のうち、本来委ねられた役割に使われているのはどれだけか?

    RIPE NCCの運営費が繰り返し論争になるのには、十分な理由がある。適切に評価するには、根本に立ち返らなければならない。地域インターネットレジストリは実際に何をしており、本来は何をするための組織なのか。

  4. ノート 11思想をどう現実にするのか?

    バンコクのAPRICOT 2024から

    誰にでも開かれた参加にはどんな負担が伴い、誰がその場に入れずにいるのか?

    APRICOT 2024の閉幕にあたり、いくつかの点が強く印象に残る。世界のインターネットを形づくる課題について、コミュニティと直接議論できたことは貴重だった。また、年次総会(AGM)は、20年以上にわたり支配が集中してきたAPNICにとって、必要な転換点となった。

  5. ノート 10思想をどう現実にするのか?

    地域インターネットレジストリの費用構造について

    数億規模に上るレジストリの予算を誰が負担し、その対価として何を得ているのか?

    地域インターネットレジストリは、全体で世界中に数百人の職員を抱え、年間数億ドルの予算で運営されている。そのすべてを賄うのは、支払いが義務づけられた会費だ。この資金調達モデルが成り立つのは、RIRが番号資源の登録を事実上独占しているからである。問うべきは、実際の機能に照らして、この規模の支出が正当化できるのかということだ。

  6. ノート 9権力を握るのは誰か?

    APNICのガバナンスと、過去との決別が必要な理由

    2023年のAPNICの情報開示は何を明らかにし、なぜ段階的な改革では足りないのか?

    2023年のAPNIC選挙を前に、私はそのガバナンスに重大な懸念を示した。当時、その懸念は退けられ、私は強い人脈と既得権益を持つ少数の集団から公然と攻撃された。その後の情報開示によって、私の警告が正しかったことが証明された。APNICは事実上、一人の個人による法的支配の下にあったのである。20年にわたり、唯一の所有者・取締役・株主である人物が、民間会社の仕組みを通じてアジア太平洋地域のインターネットに構造的な権力を及ぼしていた。この支配の集中は危険であり、APNICが自ら掲げる役割と根本的に相いれないものだった。

  7. ノート 8インターネットはどうあるべきか?

    なぜ中央集権的な代替案は失敗するのか――分散型レジストリだけが実現可能な道である理由

    国家や条約に基づく組織でレジストリを置き換えてもうまくいかないのはなぜか。代わりに何が機能するのか?

    IPv4の枯渇によって地域インターネットレジストリ本来の割り振り機能が役割を終えると、一つの問いが繰り返し浮上した。RIRは存続すべきなのか。存続するなら、どのような形であるべきか。国家による管理、政府間組織、IAEAのような組織をモデルとした条約に基づく機関など、さまざまな代替案が提唱されてきた。だが、これらの案にはすべて共通の欠陥がある。単純な技術的問題を解決するために、政治と官僚制の複雑さを持ち込もうとしているのだ。

  8. ノート 7価値を支配するのは誰か?

    なぜ今、IPアドレスを買うことは詐欺なのか――通信会社はどうすれば1兆ドル企業になり得るのか

    IPv4アドレスに数十億もの資金を投じた企業は、実際には何を所有しているのか?

    IPv4アドレスは広く資産として扱われ、巨大クラウド企業や通信事業者によって数十億ドル規模で売買されている。Amazonだけでも、取得したIPv4アドレスは1億個近くに上る。Alibaba、Tencent、Huaweiなども、数億ドル、あるいは数十億ドルを投じて同じことをしてきた。だが、多くの取締役会やCFOが見落としている点がある。これらの企業はどこも、代金を払った対象を実際には所有していない。

  9. ノート 6レジストリが機能しなくなったら?

    番号資源のポータビリティとICP-2改訂について

    ネットワークには、アドレスを別のレジストリへ移す無条件の権利がなぜ必要なのか?

    ICP-2の改訂は、インターネット・ガバナンスの構造的な弱点、すなわち番号資源のポータビリティが保障されていないという問題を正す機会である。ポータビリティとは、ネットワークが、自らのIPアドレスやAS番号(ASN)を、ある地域インターネットレジストリから別のレジストリへ移す無条件の権利を持たなければならないということだ。これは任意でも、条件付きでも、裁量に委ねられるものでもあるべきではない。ICP-2に組み込まれた必須要件でなければならない。ポータビリティがなければ、ネットワークは事実上、最初に登録したRIRに縛られ、そのRIRのガバナンスの不全や運用の破綻がもたらす結果を引き受けることを強いられる。この依存関係は、インターネットそのものにシステム全体に及ぶリスクを生む。

  10. ノート 5インターネットはどうあるべきか?

    インターネットのガバナンスの分権化について

    今日の技術が生まれる前からある組織から、基幹となる識別子を移すには何が必要なのか?

    今日のインターネットは今なお、現代の分散技術が登場する以前から存在する中央集権的な組織を通じて、中核的な識別子である名前と番号を割り当て、登録する旧来の仕組みに依存している。地域インターネットレジストリと呼ばれるこれらの組織は、ネットワークが小さく、技術面の協力が非公式に行われていた時代に生まれた。インターネットが世界規模の公共インフラへと成熟するにつれ、識別子に対する中央集権的な支配は構造的な弱点となった。権力の乗っ取り、不透明なガバナンス、政治的圧力の影響を受けやすい要所になったのである。

  11. ノート 4インターネットはどうあるべきか?

    データ主権について――技術面と実務面の現実

    国の法律で、あらゆる場所へ流れるデータを囲い込めるのか?

    データ主権をめぐる世界の議論では、技術上の理想と運用の現実がしばしば混同される。東京で開催されたInterconnect World Forum 2025で、私は一つの根本的な事実を指摘した。データがあらゆる場所を行き交い、どの単一の法域も接続を物理的にその内側へ閉じ込められないグローバルなデジタル経済では、各国のデータ国内保存義務法を実効的に執行する力には限界がある。

  12. ノート 3インターネットはどうあるべきか?

    IPアドレスの分散化について

    インターネットに最後まで残る中央集権的な層は、なぜ哲学上ではなく構造上のリスクなのか?

    インターネットは数十年にわたり、着実に分散化へ向かってきた。インフラからアプリケーションまで、ブロックチェーンからWeb3まで、ほぼすべての層で、支配が一か所に集中する状態が解消されつつある。それでも、頑として中央集権的なまま残る重要な層が一つある。名前と番号、つまりドメイン名とIPアドレスだ。これは思想上の問題ではなく、構造上のリスクである。権限が集中する要所は、どこであれ乗っ取られ、政治化され、濫用されうる。そして、それが起きればインターネットは分断される。