古い船
古い漁船が穏やかな水面に静かに浮かんでいる。青緑色の塗装が剥がれ、その下の錆がのぞいている。

これは古い漁船を写した一枚だ。船は波のない水面に静かに浮かんでいる。船体の大部分は、曇りの日の海を思わせる、色あせた青緑色をしている。けれど、あちこちで塗装が剥がれ落ち、その下の錆がのぞいているのがわかる。そうした筋は、長く厳しい年月を海で働いてきた物語だ。船側の鮮やかな黄色い標識が、この船を見分ける印になっている。船首には太いロープが結ばれ、船をつなぎ留めている。船の上には赤い金属製のフレームが立ち、赤い旗が青空に小さな彩りを添えている。船の向こうには、穏やかで静かな世界が広がる。あたりは凪いでいて、水面が光を映している。遠く、空が海へと下りてくるあたりには、霞んだ山々の起伏がかすかに見える。空はくすんだ青色で、雲ひとつない。甲板に人の姿は見えない。画面の主役は、この船だ。写真には、まるで穏やかな朝に撮られたかのような、ありのままの実感がある。船はつややかな新品ではない。長い年月を過ごし、働いてきた船だ。それでも、この光の中で穏やかな水に囲まれる姿は、美しく気高い。いくつの嵐を乗り越え、どれほどの魚を引き揚げてきたのだろうと、思いを巡らせたくなる。この写真は、働き続けてきた生涯に捧げる、ささやかな賛辞だ。