エッジコンピューティングとクラウドコンピューティングの違い
温室のセンサーを例に、現場の近くで処理すべき仕事と、共有の計算資源を活用できる仕事を考え、エッジとクラウドを組み合わせる意味を解説します。

温室では、水やりの判断を現場の近くで行い、長期間の測定データを別の場所に送って分析できる。この二つの仕事は、どちらか一方を選ぶ必要はない。
土が乾きすぎると植物に水をやる温室を想像してみてください。一方の仕事には、植物のそばで素早く対応することが求められます。もう一方の仕事では、複数の温室で数か月にわたって集めた測定値を比較します。この二つを、同じコンピューターで処理する必要はありません。
エッジは近さを、クラウドはサービスの提供形態を表す
エッジコンピューティングとは、データを生み出す人や機器、活動の近くで、処理の一部を行うことです。温室内の制御装置、小規模なローカルサーバー、近隣のネットワーク施設に置かれた機器などが、その役割を担います。
クラウドコンピューティングとは、計算資源をサービスとして利用できるようにすることです。その資源は大規模なデータセンターに置かれる場合もありますが、クラウド基盤を利用者の近くの拠点まで広げることもできます。したがって、エッジとクラウドは互いに排他的な分類ではありません。一つのシステムで両方を使うことができます。
ETSIのエッジコンピューティングに関する取り組みは、クラウド事業者との連携も含め、利用者の施設内やネットワークのエッジへの導入を扱っています。サービスの提供形態になじみがなければ、まずクラウドコンピューティングの入門記事をお読みください。
即時の対応は、出来事が起きる場所の近くで行う
先ほどの温室なら、現場の制御装置がセンサーの値を読み取り、判断のたびに遠方のサーバーへ問い合わせることなく、バルブを操作できます。この経路を短くすれば、ネットワークによる遅延を減らせます。測定値を現場で選別したり要約したりすれば、外部へ送るデータ量も減らせます。
こうした利点を得られるかどうかは、アプリケーションの作り方によります。近くに置かれた機器でも、判断のたびに遠隔のサービスを必要とするなら、接続が切れたときに同じ機能を維持できません。距離だけでなく、現場の処理能力、ソフトウェア、障害時の代替動作も重要です。
広い視野での分析には、共有の計算資源を活用する
クラウドサービスなら、多数の温室の測定値を集約し、履歴を保存して、栽培シーズンを通じた生育条件を比較できます。こうした仕事は、すべての植物のそばに設備を置かなくても、共有のストレージや計算資源を活用できます。
速度でもコストでも、どちらかが常に優れているわけではありません。ネットワーク上の移動時間、処理を待つ時間、計算そのものにかかる時間が、すべて応答時間に影響します。良好な接続を備えたクラウドサービスが、過負荷のローカル機器より速いこともあります。一方、現場ですぐに確認できれば、不要な往復通信を省けます。
処理の分担を決めるための実践的な問い
- 応答時間:どの判断を速やかに下す必要があり、利用者や機器はどのくらい待てるのか。
- 接続の喪失:現場で継続すべきことは何か。接続が回復するまで待てることは何か。
- データの移動:どの生データを施設外へ送る必要があるのか。要約だけで足りるのか。
- 運用の手間:近くに置いた機器は誰が保守するのか。遠隔のサービスでは、どの資源の利用やデータ転送に料金が発生するのか。
答えによっては、現場で応答を完結させ、遠隔で保存と分析を行う構成になるでしょう。より単純な、一か所で完結するシステムが適している場合もあります。構成要素を増やす意味があるのは、それが実際の仕事に役立つときだけです。
拠点が増えても、独立性が高まるとは限らない
多くの場所に分散したコンピューターを、一つの組織が管理していることもあります。機器がどこにあるかという問題と、その動作のルールを変える権限を誰が持つかという問題は別です。システムを理解するには、処理がどこで行われるかと、その運用方法を誰が決められるかの両方を見る必要があります。
この区別は、インターネットの各部分を誰が支配しているのかという、より大きな問いにつながります。利用者とコンピューティングサービスを結ぶ接続については、インターネット接続の主な種類へお進みください。