一歩を踏み出しても、潮は静かなまま

海がその縁を譲る場所を、Lu Hengが歩く。足元は湿り、引いていく波にならされている。その足のまわりには、ガラスのように薄く光がたまっている。

海辺を歩くLu Hengの姿が、岸辺の浅い水に映っている。

海がその縁を譲る場所を、Lu Hengが歩く。足元は湿り、引いていく波にならされている。その足のまわりには、ガラスのように薄く光がたまっている。頭上には、空がごく自然に開けている。柔らかな青は、見えない太陽の方へと深まってゆく。それを遮るものは何もない。

肩の力が抜けた佇まいで、コートをゆったりとまとい、視線を下に向けている。その動きには一定の調子がある。遅いのではなく、一歩ずつを確かめるような歩みだ。自分自身のリズムに耳を澄ます人のように。その背後では、水平線が位置を変えず、呼吸のように一定に保たれている。

心に残るのは距離ではなく、空間だ。写真には重さが感じられない。水越しに見た記憶のようだ。その隅々までが静けさを感じさせる。音のしない足取り、風のない空気、そしてフレームの外へと続いてゆく歩み。