ジョナサン・ハイト『The Anxious Generation』の要点
SNSや子育ての傾向は、Z世代のメンタルヘルスにどのような影響を及ぼすのでしょうか。ジョナサン・ハイトの『The Anxious Generation』から、重要な知見を紹介します。

ジョナサン・ハイトの著書『The Anxious Generation: How the Great Rewiring of Childhood Is Causing an Epidemic of Mental Illness』(不安の世代――子ども時代の大規模な再編が、いかに精神疾患の蔓延を引き起こしているか)は、Z世代が直面するメンタルヘルスの問題を掘り下げています。以下では、本書の特に重要な知見を紹介します。
1. メンタルヘルスの問題にSNSが果たす役割
Instagram、TikTok、SnapchatといったSNSプラットフォームは、とりわけ10代の女子のメンタルヘルスに大きな影響を及ぼしてきました。これらのプラットフォームには、次のような作用があります。
1. 理想化された華やかな場面ばかりを見せることで、自分は劣っているという感覚を強める。
2. ネットいじめを増加させる。
3. アルゴリズムによって利用を促し、依存を助長する。
こうした要因によって、Z世代では不安、抑うつ、孤独感が強まっています。
2. 過保護な子育てが、困難から立ち直る力に及ぼす影響
「安全至上主義」など、現代の子育ての傾向は、子どもが困難から立ち直る力を養うための挑戦に向き合う機会を奪っています。その結果、大人になってからストレスや逆境に対処しにくくなり、問題解決能力が低下する可能性があります。この傾向を反転させるには、自立を促し、対処できる範囲のリスクを子ども自身に経験させることが重要です。
3. スマートフォンの使用とメンタルヘルス:四つの害
ハイトは、スマートフォンがメンタルヘルスの問題の一因となる四つの主な経路を挙げています。
1. 対人交流の不足:対面での交流が減ることで、人とのつながりが弱まります。
2. 睡眠不足:夜遅くまで使うことで、欠かせない睡眠周期が乱れます。
3. 注意力の分断:絶え間ない通知が集中力を損ないます。
4. 依存:ドーパミンの働きを利用するアルゴリズムが、やめたくてもやめられない行動を生み出します。
4. SNSの影響に見られる性差
本書によれば、10代の女子はSNSからとりわけ大きな害を受けています。その背景には、外見によって承認を得ることを重視するプラットフォームのあり方と、人間関係を使った攻撃にさらされる機会の増加があります。
5. 不安に及ぼす文化的・政治的影響
アイデンティティ・ポリティクスや、感情面で傷つかないことを重視する風潮といった文化の変化は、意図せず、若者が逆境に対処する力を十分に身につけにくい環境をつくってきました。その結果、傷つきやすさが増し、不安の度合いが高まっています。
6. 困難から立ち直る力を育てるための実践策
ハイトは、こうした課題に対処するため、実行可能な方策を示しています。
1. 子どもが自分で問題を解決する力を育てる。
2. オフラインでの意味のあるつながりを促す。
3. SNSの使いすぎを抑え、テクノロジーの利用に一定の線引きを設ける。
これらの要因に取り組むことで、親、教育者、政策立案者は、今の若者のメンタルヘルスの危機につながる傾向を反転させる力になれます。
『The Anxious Generation』のまとめ
社会とテクノロジーの変化を幅広く検討する本書は、親、教育者、メンタルヘルスの専門家に貴重な知見を提供しています。Z世代の心の健康を支え、デジタル時代に困難から立ち直る力を育むには、これらの重要な要因を理解することが欠かせません。