論考13:分散型台帳技術による世界のIPアドレス登録の分散化について
一意性を保証するのが組織からアルゴリズムに変わると、何が変わるのか?

Lu Hengが提案するのは、一つの機関だけが唯一の正本を保有するのではなく、ネットワーク同士で検証できる記録のあり方だ。
今日、インターネットの最も根本的な層であるIPアドレス登録は、依然として五つの民間の地域インターネットレジストリに集中している。それぞれが世界全体の登録データベースの一部を保有し、一国の法域の下で活動している。技術的にはごく単純な、数百メガバイト規模の登録データベースにすぎない仕組みの維持に、五つの組織を合わせて年間数億ドルが費やされている。この構造は、いまや世界の重要インフラとなったものに、官僚主義、非効率、地政学的リスク、そして単一障害点を持ち込んでいる。
これらのリスクは机上のものではない。地域インターネットレジストリ(RIR)は所在地の法律に従う民間組織であるため、その判断が担当地域内の数十か国の利益や法律と衝突する可能性がある。一つのレジストリに対する制裁や政治的圧力、ガバナンスの機能不全、さらには財務上の困窮さえも、連鎖的に地域や国全体のインターネット障害を引き起こしかねない。近年には、レジストリの行動によって数億人の利用者のインターネット接続が危うく途絶えかねない事態も起きている。現在のモデルは、これほどの規模と戦略的重要性を持つ資産の管理を想定して設計されたことのない組織に、永続的な善意と完璧なガバナンスを期待している。
分散型台帳技術は、構造そのものが異なる解決策をもたらす。一つの組織が管理する唯一の権威あるデータベースに代わり、各ネットワークが自らの番号資源について暗号技術で検証できる記録を保有し、その複製をインターネット全体に分散して保持する。RIRが提供している唯一の実質的価値である一意性は、組織ではなくアルゴリズムによって保証される。強靱性は仕組みそのものに備わる。いかなる一つの法域、企業、政治的事件も、世界全体の記録を改変したり消し去ったりすることはできなくなる。
利点は即効性があり、具体的だ。現在は人手による対応に数週間を要する登録・移転手続きを自動化し、ミリ秒単位で完了できるようになる。記録は恒久的かつ改変不能となり、レジストリの判断によって企業のネットワークや事業が破壊されるという、存続に関わるリスクがなくなる。所有権は実体を伴うものになる。トークンを保有することがアドレスの支配を意味し、他国の第三者の裁量で貸してもらう状態ではなくなる。
この転換は、経済的な実態を正当に生かす道も開く。IPv4アドレスはすでに1,000億ドルを超える市場価値を持つが、所有権が認められていないため、流動性は不合理なほど低い。IPアドレス登録を分散型台帳へ移せば、アドレスは他のコモディティと同様、自由に取引できる資産になる。通信事業者が保有するIPアドレスは、ようやく貸借対照表に正確に反映されるようになり、時価総額が数倍になる可能性もある。これは憶測ではない。構造的な歪みを正すという話だ。
規制をめぐる懸念は的外れだ。分散化は主権をなくすのではなく、取り戻す。各国政府は自国の領域内にある事業者に対する全面的な権限を保持し、外国の民間レジストリを介した間接的な手段ではなく、自国の法律を直接執行する。規制は、世界規模で政治化され、脆弱なものではなく、各国の実情に即した、執行可能なものになる。
RIRモデルは、インターネットが小さく、アドレスが潤沢だった時代には機能した。その時代は終わった。IPv4の枯渇と膨大な資産価値は、説明責任を欠いた集権的管理の限界を露呈させている。官僚的な手続きや政府間の統制をさらに増やしてこのモデルを継ぎはぎし続けても、問題は深まるばかりだ。
私たちにはいま、インターネットの創設時には存在しなかった技術がある。中核部分を分散化できなければ、ブロックチェーン、Web3、デジタル・アイデンティティといった上位層のあらゆる分散化は、乗っ取られたり壊されたりしかねない集権的な土台の上に置かれたままだ。IPアドレス登録を分散型台帳へ移すことは、イデオロギーの問題ではない。インターネットがこれからの100年も安定し、中立で、分断されない存在であり続けるために、システム全体として必要なことなのである。